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アクション・プラン10の着実な実施と加速のために
~5つの重点分野への具体的取り組み~ -平成20年5月


私が事務局長を務める自民党の「外交力強化に関する特命委員会」(森喜朗 委員長)で、新たな提言を取りまとめましたので以下掲載致します。

提言については近々、福田総理、高村外務大臣、額賀財務大臣に申し入れの予定です。

今年はG8サミットが北海道洞爺湖で7月に開催され、議長国日本のリーダーシップが期待されています。昨年取りまとめた「アクション・プラン10」と今回の提言を着実に実行することで、まさに国益に沿った日本の外交力をしっかりと強化していきたいと考えています。




アクション・プラン10の着実な実施と加速のために

~5つの重点分野への具体的取り組み~


平成20年5月22日

自由民主党政務調査会

外交力強化に関する特命委員会


「外交力強化に関する特命委員会」(森 喜朗 委員長)では、「アクション・プラン10」(平成19年6月8日)の実施状況をレビューし、重点分野となる3テーマ、すなわち、(1)「外交の機動性・在外公館整備」、(2)「議員外交」、(3)「在外拠点間の連携強化」を選び、各々につきワーキング・チームを立ち上げて一層掘り下げた議論を重ねた。以下は、各チームにおける検討及び本委員会での議論を基に、特に、今後取り組むべき5つの重点事項を取りまとめたものである。

1:外交の機動性を向上させるための体制整備

  • 閣僚等が使用する利便性の高い航空機の在り方を多角的に検討し、専門家を含めた検討会議を、政府内の「政府専用機検討委員会」の下に本年夏までに立ち上げ、年内に結論を得る。それを踏まえ、必要な調査を行うため、来年度予算に調査費の計上を図る。
  • 訪日する外国要人に対する警護措置について、その接遇としての意義を踏まえ、諸外国並みの警護措置を講じられるよう体制整備をはかる。
  • 高騰する航空賃や宿泊料の実情を踏まえ、必要な旅費を拡充することにより、外国出張の必要性の増大に対応し、外交の機動性を高める。

2:外交の最前線たる在外公館の戦略的施設整備と現地職員の確保

  • 本年4月より行われている、立地条件、建物の機能性、セキュリティ対策などについての全大使館・公邸の点検(平成21年度で完了)に基づき、優先順位を付したメリハリのある施設整備を戦略的に行う。
  • 上記の施設整備に当たっては、中長期的視野から、部分改修、全面改修、新規建設等の費用対効果を念頭に入れる。同時に、在外公館以外の海外の公的拠点(JICA、JBIC、JETRO、国際交流基金等)の施設との近接化・合理化や調達するサービスの共用化などを通じたコスト削減も検討する。
  • 在外公館の戦力である優秀な現地職員が、給与待遇面での他との競合から離職するなどの深刻な事態を食い止めるため、少なくとも現地の物価上昇や実情を反映した給与水準に早急に高める。

3:質の高い議員外交を進めるための公的支援の充実

  • 衆参両院の海外派遣予算と招へい予算の比率は、毎年ほぼ4対1であるが、海外派遣については、全体の調整が十分なされていないため、派遣先に偏りが見られる。一方、海外から訪日する外国要人の接遇については、近年、外国要人の訪日が増加しているにもかかわらず、招へい予算の使途が限定されているため、毎年、年度末には予算の未消化が発生する状況にある。
  • 今後は、フライトの利用クラスの見直しや、随行職員の絞り込みを含め院の派遣経費の縮減を図り、この合理化分を財源として、現在、議長等による外国要人の接遇に限定されている院の外国要人訪日接遇予算を増額し、その使途をより柔軟化する。
  • 具体的には、3つの手続を経て、議員連盟が外国要人を接遇する経費を公的に支援できるよう工夫する。
    (1) 個別の議員連盟が組織概要、活動状況等を院に届け出ることができる制度を設ける。
    (2) 届出のあった議員連盟による外国要人の接遇に対し、各院の議院運営委員会が当該要人のランクや訪日目的等を審査し、承認することにより、院の予算で経費を支援できる制度を設ける。
    (3) このため、議院運営委員会の下、国際交流小委員会(仮称)を設け、議員外交に関する必要な政策判断を行うことを検討する。
  • 更に、今後、海外派遣予算と招へい予算の配分割合や区分そのものの必要性についても検討し、一層柔軟な予算の活用につなげることが必要である。

4:海外における日本の諸機関の間の連携強化

  • 世界各国には、在外公館以外にも、例えば、JICAが56ヵ所、JBICが27ヵ所、JETROが73ヵ所、国際交流基金が21ヵ所の海外拠点を有しており、これらは全て日本外交を強力に推進するための有益な資源である。
  • これら諸機関の連携を強化するため、経済協力、文化等の各分野において、戦略的・組織的な取り組みを行う。同時に国内においても、これら諸機関の拠点間の連携を更に促進するため、諸機関の本部間の協議を緊密化し、連携プロジェクトが生まれる土壌を組織的に整備する。
    (1) 経済協力分野においては、経済関係機関、NGO等の諸拠点との連携により現行の現地ODAタスクフォースを拡大し、産業育成支援など幅広い取り組みを促進する。この際、国際機関の現地事務所(世界銀行、UNDP等)等とも緊密に協力し、これらのグローバルな知見・ネットワークも活用する。
    (2) 文化分野においては、日系企業の社会的責任(CSR)活動など、企業と協力した文化交流事業に積極的に取り組む。また、日本語普及は、海外において日本への理解を広げる重要な手段であるとともに、今後、日本との経済交流で活躍する人材を育成する手段となるものであり、よりレベルの高い教材の制作、権威ある日本語検定制度の確立のための見直しを進める。
    (3) 経済協力、文化交流分野以外でも、日本が優れた知見を有する省エネルギー、環境、科学技術などの分野を我が国の信頼と発言力を高める連携強化プロジェクトとして重点的に扱う。
  • 上記の連携強化については、現地の事情によってその在り方が異なる。今後は発展状況の異なる国・地域においてモデル都市を複数設置し、そこでのベスト・プラクティスを創出、確立して世界中の在外拠点間での共有を図る。
  • これらの連携において、NGOが果たす役割も大きい。特に、NGOと企業のCSR活動との連携促進に向けた情報交換の場を増やすと同時に、NGOがより機動力をもって活動できるよう「日本NGO連携無償資金協力」の枠組みの中でNGOが支援を受ける上での諸条件の緩和を進める。
  • また、これらの連携においては、地方自治体との連携、姉妹都市関係の活用も念頭に置いて取り組む。

5:政府開発援助(ODA)を質・量ともに充実

  • 今年は、第4回アフリカ開発会議(TICADⅣ)及び主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)が日本で開催され、国際協力での議長国日本のイニシアティブが期待されている。しかし、この10年間で我が国のODAは約4割減少し、かつての世界一のODA大国日本の地位は2007年には第5位にまで低下している。我が国の総合的外交力を強化していくためにも、この状況を反転し、ODAを充実させていくことが必要不可欠である。
  • 質的な側面では、我が国ODAの国際競争力を戦略的に高めていくため、海外の諸機関の間の連携を強化するとともに、ODAの費用対効果、目標達成への貢献度、民間投資の呼び水効果、広報のあり方など多角的な点検作業等を通じた選択と集中を進め、不断の改善努力を行っていく。
  • 同時に量的目標も必要である。第4回アフリカ開発会議(TICADⅣ)に向けての、今後対アフリカ向けODAを増大させ、2012年に倍増し、2008~2012年の5年間でアフリカ向け民間直接投資の倍増につながるよう、ODAや貿易保険等を積極的に活用するとの政府のイニシアティブを高く評価する。今後は、対アフリカのみならず、ODA全体の拡充についても、明確な数値目標を設定し、それを着実に実行していくことが重要である。

                                    

各ワーキング・チーム報告

Ⅰ. 外交の機動性・在外公館整備に関するワーキング・チーム 

 急速に変化する国際社会において、我が国が変化に速応し、機敏に対応する外交を展開することが急務である。このためには、我が国の外交活動を支える体制・基盤を主要先進国と比べて遜色のないよう、様々な面において強化していく必要がある。さらに、日本への元留学生、日本の在外拠点で勤務する者、日本文化に関心を有する者など日本と関わりの深い外国人との交流ネットワークは外交の大切な基盤であり、これも活用しつつ機動的な外交を推進していくことが重要である。

1.利便性の高い政府専用機の導入を具体化する

  1. 他の主要国の閣僚の外国訪問に比し、その効率が著しく低い我が国の現状を踏まえ、利便性の高い政府専用機を導入するなど、閣僚等の外国訪問の機動性の向上を実現するために必要な措置を講じる。
  2. 閣僚等が使用する航空機の在り方について多角的な検討を進める。その一環で、専用機の必要性や費用対効果、導入する際の専用機の機種や運用形態の検討のため、政府内の「政府専用機検討委員会」の下に、新たに専門家及び技術者を含めた検討会議を本年夏までに立ち上げる。この検討会議において、確保すべき座席数・航続距離・離陸距離等のニーズや購入・運航・維持経費等を勘案しつつ、年内に結論を得る。中長期的には、我が国の航空産業の育成、我が国の工業技術力のプレゼンス等の観点から、国産機も視野に入れる。それを踏まえ、必要な調査を行うため、来年度予算に調査費の計上を図る。
  3. 同時に、国際会議や二国間会談に閣僚が出席できないことは国益に直結する問題であるため、我が国が諸外国に劣らぬ機動性を備えられるよう国会会期中の閣僚の委員会出席の柔軟化が図られるべきである。

2.機動的な外交交渉を行う体制を整える

  1. 本年のG8サミット,TICADIVに向けたアフリカ外交やEPA,FTA交渉、気候変動対策などグローバルな課題への取組などにより、出張して外交折衝を行う必要性は飛躍的に拡大している。さらに、各国の首都以外での閣僚会合の増加や国際機関選挙のための兼轄国への働きかけなど、在外公館からの出張も一層増加している。
  2. このように出張の必要性が増大する中、近年はさらに燃料高を背景に航空賃のサーチャージが5年で8倍にも膨れてきているが、予算に十分には反映されていない。
  3. 宿泊料については、一部の都市において実勢と乖離した状況にあり、急激な物価上昇や為替変動等に適切に対応でき、実際に要した費用が賄われるよう、必要な措置を講じる必要がある。
  4. 以上を踏まえ、外交の最前線において機動的・効率的に活動できるよう旅費(航空賃、宿泊料等)を拡充する。

3.大使館・公邸の立地や施設の点検を進め、在外公館施設を整備する

  1. 本年4月より2年間で立地条件、建物の機能性、セキュリティ対策、耐久性などの点検項目について全大使館・公邸の点検を行う。
  2. この点検結果に基づき、優先順位を付し、建設コスト削減のための諸般の合理化の工夫も行いつつ、メリハリのある施設整備を進める。
  3. 10年後には大使館の4割、公邸の6割が築30年以上になるなど老朽化が激しく、修繕経費が増大していることや、厳しい環境における新設公館の開設が増加していることを踏まえ、在外公館が十分な機能を発揮できるよう中長期的な視野から、戦略的に施設整備の充実をはかる。
  4. 情報防護は外交活動の基礎であり、情報防護体制の更なる強化に取り組む。このような取組の一環として通信網の利便性と信頼性を一層高めるため、平成20年度から外務本省に、引き続き全在外公館に、外部開放型と内部専用型の二系統のネットワークを3年間で整備する。

4.優秀な現地職員を確保し、流出を食い止める

  1. 政経公開情報のリサーチ・分析や人脈発掘支援などを行う優秀な現地職員は我が国外交の機動力を高める上で不可欠な戦力であり、積極的に発掘・確保していく必要がある。
  2. しかし、現在、我が国外交の貴重な戦力として活躍している現地職員が給与面での不満を理由として転職したり引き抜き等にあう事態が拡大しており、深刻な問題となっている。
  3. 優秀な現地職員の流出を食い止めるため、少なくとも現地の物価上昇や実情を反映した給与水準に高めることとする。

5.訪日した外国要人の警護を充実させる

  • 外国要人の警護を充実させるべきことは、警備上の必要性にとどまらない。接遇は外交上極めて大きな意義を有するものであり、現に、諸外国においては外国要人の国内移動に手厚い警護措置を講じ、接遇の外交的効果が高められている。我が国においても、訪日した外国要人に対し、諸外国並みに空港・宿舎間の移動の際の先導その他の警護措置を講じられるよう体制整備をはかる。


Ⅱ.議員外交に関するワーキング・チーム 

 我が国の総合的な外交力を強化し、オール・ジャパン外交を推進していく上で、国会議員は重要なプレイヤーである。政策上の意見交換のための国際会議への出席、閣僚未訪問国との対話など政府の活動と相乗効果をもたらし得る海外訪問、議員間の長期的な信頼関係構築などの意義深い活動を拡充し、一層戦略的な議員外交を積極的に実施できるような体制整備を行うことが極めて重要である。

1.院による海外派遣予算を縮減し、外国要人訪日接遇予算の増額を図る

  1. 院の海外派遣は、議員外交の重要なツールであり、その予算を一層有効に活用していく必要がある。また、院の海外派遣予算と招へい予算の比率は、毎年ほぼ4対1であるが、海外派遣については、全体の調整が十分に機能していないため、派遣先に偏りが見られる一方、訪日する外国要人の接遇については、招へい予算の使途が限定されているために、年度末に予算の未消化が発生する状況がある。
  2. このため、来年度予算から、フライトの利用クラスの見直しを含めた経費の合理化等により、必要な海外派遣数を確保しつつ経費の縮減を図る。この合理化分を財源として、現在、議長等による外国要人の接遇に限定されている院の外国要人接遇予算を増額し、その使途をより柔軟化する。具体的には、下記2.及び3.の手続きを経て、各委員会及び議員連盟等が外国要人を接遇する経費を支援できるように工夫する。

2.院において議員連盟の届出制度を作る

  • 院において個別の議員連盟の活動を統一的に把握できるようにするため、議員連盟が組織概要と活動状況をいずれかの院に対して届け出ることができる制度を設ける。届出は、超党派議員連盟に限定せず、また、二国間や地域の議員連盟のみならず、特定のテーマに基づき活動する議員連盟も行えることとする。

3.各委員会及び議員連盟による外国要人の接遇に対する公的支援を充実させる

  1. 政府、院、党の招待、国際会議への参加などのために外国要人が訪日する機会を活用した議員外交への公的支援を充実させる。このため、各委員会及び議員連盟が外国要人を接遇する際には、院に対して経費の支援を申請し、各院の議院運営委員会が当該要人のランクや訪日目的等を審査し、承認することにより、当該要人の訪日接遇経費を支援する制度を設ける。このため、院においては議院運営委員会の下に国際交流小委員会(仮称)を設け、議員外交に関する必要な政策判断を行うことを検討する。
  2. 議員外交を進める会場については、平成22年に完成予定の新議員会館の施設整備構想において、外国要人の接遇ができるようなものとするよう検討を進める。また、議長公邸・副議長公邸等、既存の公的施設の有効活用も進める。

4.議員の海外訪問をより戦略的に展開する

  1. 議員外交の効果を一層高めるため、議員の訪問先が一時期に特定地域や特定国に集中することがないようにすべきである。このため政府、党、院が有する議員の海外訪問の情報を各院事務局で集約し、両院による海外派遣先の選定に活用する。また、この情報を各院事務局が各委員会及び議員に対して広く提供する仕組みを作り、各委員会及び各議員が外国訪問を行う際に自主的に訪問先を調整できるようにする。議員の海外訪問については、国際社会における我が国のプレゼンスの向上、資源・エネルギー外交の推進、国際機関選挙など外交戦略の優先度を踏まえ、閣僚等の訪問が手薄になっている国への訪問を促進することに留意し、訪問後のきめ細かい対応も心掛ける。
  2. 我が党においては、日AU議連をモデルとして、世界の地域ブロック毎の議員連盟や研究会などを作り、当該地域との議員外交を積極的に推進する。

5.TICADⅣの機会に精力的な議員外交を展開する

  • 多数のアフリカ首脳が来日するTICADⅣは、議員外交の千載一遇の好機であり、アフリカ諸国との関係強化に積極的に取り組んできた日AU議連を中心に、議員外交を精力的に展開する。特に、2008年は、TICADⅣに加えてG8サミットが開催される年であり、我が国は、議長国としてアフリカ問題について主導権を発揮する立場にある。このような立場を活かし、日AU議連共催のレセプションや各国在京大使館主催レセプションの機会なども活用して、我が国のアフリカ外交をオール・ジャパンとして強力に推進する。

6.国会会期中の海外派遣を機動的に実施する

  • 国会会期中であっても、時機を捉え、機動的な議員外交が展開できるような改善措置を図る。このため、重要な国際的行事には、人数と出張期間等、一定の条件を付した上で、国会会期中でも議員の派遣を容易にできるようにすることにつき両院の議院運営委員会及び上記3.の国際交流小委員会(仮称)において検討を進め、我が国の総合的な外交力強化を図る。


Ⅲ.在外拠点間の連携強化に関するワーキング・チーム 

我が国の在外拠点については、「アクション・プラン10」に掲げたとおり、今後10年間で150大使館体制を目指しており、平成20年度末時点で大使館数は128館になる見通しである。また、在外公館以外にも、例えば、国際協力機構(JICAA)が56ヵ所、国際協力銀行(JBIC)が27ヵ所、日本貿易振興機構(JETRO)が73ヵ所、国際交流基金(Japan Foundation)が21ヵ所の海外拠点を有しており、これらは全て日本外交を強力に推進するための有益な資源である。

これらのいわゆる「4J、5J」 や国際観光振興機構(JNTO)をはじめとする政府関係機関、自治体国際化協会(CLAIR)や地方自治体の海外事務所、さらには現地の日本人会、日本商工会、日系企業、我が国NGOなどが連携を戦略的に強化し、効果的・効率的な「オール・ジャパン」外交を展開していくことが必要である。このためにまずモデルとなる拠点を設置し、連携の拡大・深化をはかって戦略的な取組を行う。 

1.連携の対象分野を拡大するとともに、内容を深化させる

  1. 経済協力分野および経済分野においては、在外公館、JICA、JBIC、JETROを主要メンバーとする現地ODAタスクフォースの成功例の共有により、連携のノウハウを広める。
    これまで、ベトナムやインドネシアで在外公館、政府関係機関や現地商工会が連携し、相手国政府とも一体となった投資環境整備の取組が多大な成功を収めており、各地で、産業育成支援などの連携も進んでいる。こうした分野での具体的な連携拡大を戦略的に推進する。また、現在行われている現地ODAタスクフォースに、地方自治体、経済関係機関、NGOなどの諸拠点との連携も導入することにより同タスクフォースを拡大し、幅広い取組を促進する。各国内に加え、より広範に地域内でも在外拠点間の情報の共有の仕組みを深化させる。
  2. 文化分野においては、現地日系企業、政府関係機関や地方自治体の海外事務所等が連携し、留学生受入拡大や「Visit Japan」キャンペーンなど政府の施策を推進するため、ジャパン・ウィークや周年事業などにおける各種文化交流事業の有機的な企画・実施を戦略的・計画的に行う。また、日系企業の社会的責任(CSR)に係る活動との効果的な連携をはじめ、企業と協力した文化交流事業の企画・実施にも積極的に取り組む。
  3. 海外における日本語普及については、日本語を学ぶ外国人が、その後留学や勤務のため訪日したり、海外の日系企業で働くなど、日本語を契機として長年にわたり我が国と緊密な関係を持つ可能性が非常に高い集団であることを念頭においた対応が必要である。その意味でも国際交流基金、JICA等の諸機関による更なる連携を進め、より効率的な実施に努める。また、国際交流基金により、IT技術も活用しつつ多様なニーズに応じた教材制作の強化、権威ある日本語検定制度の確立のための見直しを進める。
  4. また、日本が優れた知見を有する省エネルギー、環境、科学技術などの分野における国際的課題への取組に貢献し、国際社会において我が国の信頼と発言力を高める施策を行う際には、特に「4J、5J」といった諸機関の在外拠点による連携を強化して取り組む。
  5. 各分野における地方との連携にあたっては、政府関係機関と地方自治体やCLAIRの海外事務所等との戦略的な連携を中核としつつ、日系企業などとも連携を深める。今年、累計5万人を突破するJETプログラム経験者は、日本外交にとって大きな人的資産であり、帰国後のネットワーク強化を推進する。
  6. さらに、国際機関の現地事務所は、情報の集積地であり、我が国の諸機関の在外拠点が連携を強化する際には、世界銀行、国連開発計画(UNDP)等との緊密な協力を持ち、これらの機関が各分野で持つグローバルな知見、ネットワークも活用し、我が国の取組みを一層効果的なものとする。

2.モデル都市を設置し、効果的・効率的に連携を強化する

  1. 先進国を含め、発展状況の異なる国・地域でモデル拠点を複数選定し、在外公館と国際交流基金、JICA、JETRO、地方自治体事務所、商工会といった諸機関の活動状況などを踏まえつつ、効果的・効率的な連携強化に戦略的に取り組む。
  2. モデル拠点においては、上記1.のような経済協力、経済、文化交流、観光などの諸分野の中から、現地の事情等を勘案し、重点的に取り組む対象分野を選ぶなど連携強化に戦略的に取り組む。
  3. また、モデル拠点においては、現地事情や危機管理の観点などを踏まえつつ、調達するサービスの共用化、在留邦人等にとっての利便性の向上に向け、わが国在外拠点施設の新設や見直しの機会を通じ、施設の合理化・近接化に向けても検討を進める。
  4. これらの連携事例を今後3年間集中的に蓄積し、その過程でベスト・プラクティスを選定して世界中で共有することにより、他の国・地域での活用につなげていく。

3.本部と現地における連携体制を一層強化する

  • 海外における拠点間の連携を更に促進するため、現地のみならず、それぞれの政府、政府関係機関、経済団体等の本部間の協議を緊密化し、連携プロジェクトが生まれる土壌を組織的に整備する。本部での協議結果は、的確にそれぞれの拠点に連絡し、連携強化の指示を行う。現地の活動から得られる教訓やベスト・プラクティスを蓄積し、さらなる連携強化のために活用する。

4.民間ネットワーク(NGO、企業等)との連携を強化する

  1. 我が国NGOと企業のCSR活動との連携促進を図るべく、諸機関が、国内及び在外におけるNGOと企業の情報交換を促進し、交流の場を増やすよう努める。
  2. 日本NGO連携無償資金協力におけるNGOの自己負担が適用される基準額(現行2000万円)の引き上げ、及び現行の自己負担比率20%の引き下げの実現並びにジャパン・プラットフォームが実施する紛争後の緊急人道支援期間(現行1年)の延長に向けて検討を進める。更に、日本政府が拠出した国際機関における基金のわが国NGOによる活用を促進する。
  3. パキスタン地震などにおける連携の成功経験を活用し、大規模災害等の際の政府、関係機関、NGOとの連携の促進に積極的に取り組む。

5.日本外交における対外支援の国際競争力を高めるため、政府開発援助(ODA)を質/量ともに充実させる

上記1.~4.に示された取組により在外拠点が連携を強化することは、我が国の対外支援の国際競争力を高め、ODAのより効果的な実施につながるものと期待される。しかしながら、量的には我が国の政府開発援助(ODA)は、この11年間で約4割減と大幅に減少しており、かつては世界一のODA大国であった日本が2007年には、米、独、仏、英に次いで第5位となった。ODAの一層の活用は、我が国が如何なる国家像を目指すのかという方針にも直接関係する課題である。在外拠点が精力的な連携を図り、我が国の総合的外交力を強化し、国際社会において我が国の信頼と発言力を高めるため、質・量ともODAを充実させていくことが重要である。

 以 上