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米国欧州視察報告



ニューヨークで開催された世界議長会議に出席した綿貫衆議院議長の随行で8月末より訪米し、帰途、欧州に立ち寄ってきました。



ニューヨーク 国連本部前にて


1. 米国の内政全般
 米国の景気拡大は、今年7月で過去最長の112ヶ月に入った。景気拡大の要因はIT革命の成果に加え、規制緩和の推進、適切な金融政策が実施されたことにあると言われる。好調な経済を背景に、米国は3年連続で財政黒字達成の見通し。年央経済見通しによれば、今後10年間の財政黒字額は約4.2兆ドルに達する見込み。このような好調な経済を背景にクリントン政権に対する支持率は、引き続き50%台後半から60%前半の高い水準で、決してレイムダックにはなっていない。クリントン大統領は、残された任期の中でこれまで優先的に取り組んできた政策課題(「患者の権利法」の制定、最低賃金引き上げ、銃規制法制定、対中PNTR法の成立等)の実現に向け、連邦議会に対して協力を呼びかけている。同時に現在行われている大統領選挙で、ゴア副大統領への政権継承に強い意欲を示している。


2. 米国の大統領選挙

 9月4日のレーバーデーを過ぎて、大統領選挙も最終盤に入ってきた。選挙結果予測については、民主党大会(8月11日)前はブッシュ有利で推移してきたが、民主党大会を経て、ゴアの支持率が急上昇し、9月に入り、この傾向は定着しつつあるかに見える。ただし、現時点で世論調査の結果に過度の信頼を置くことには注意をする必要があるとの指摘もあり、最終的には10月に実施される大統領候補者のテレビ討論(3回:10月3日、11日、17日)の結果により、流れが決まると思われる。ここに来て両候補のネガティブキャンペーンが激化し、個別の政策での揚足取りも垣間見える。大雑把に言えば有権者が現状に満足するのか、変革を求めるのか、ということが大きなイシューとなるが、現在、アメリカでは以下のような問題が有権者にとって主な関心事項として上がってきている。

  1. 人格、リーダーシップ
     大統領選挙で常につきまとう要素。ブッシュは前大統領の息子(ボンボン)、あまり政策に強くない(特に外交)とのイメージがあり(但し人なつっこく、話しやすい)、安心感がなかったが、チェイニー等前ブッシュ政権、共和党のベテランをアドバイザー、スタッフにそろえ、この点をクリアにしつつあるとの見方あり。ゴアは副大統領のイメージが強く、教師のような口調で話す「堅い」人物(人間的な面白みがない)との批判が強かったが、民主党大会でゴアは右を率直に認め、それが世論に好感された模様。確かに“ゴアらしさ”というものが見えてきた感じがする。

  2. いわゆる倫理問題
     クリントン大統領の一連のスキャンダルからいわゆる「クリントン疲れ」が有権者の間にあったとされている。共和党はこの問題を利用してきた経緯あり。しかし、ゴアは一連の選挙活動でクリントンとの距離をおきつつ、独自性を出しながら、民主党大会においてはリーバーマン氏(スキャンダル事件では真っ先にクリントンを批判)を副大統領候補としたことから、これを乗り越えたとの見方が主流になりつつある。他方、初めてユダヤ系の副大統領候補を選んだことによるバックファイヤー(潜在的にあるといわれる反ユダヤ感情等)があるのでは、との見方も一部である。

  3. 経済政策
     共和党は民主党に比べて大幅な減税を主張。共和党の減税規模が適正かについては大企業優先、低所得層への配慮不足といった議論もある。多くの国民には好調な米国経済を背景にこれまでの経済政策を基本的に是認する雰囲気があり、ゴア側に有利に働いている。他方、金融政策やストックマーケットの関係で経済が失速した場合には圧倒的にゴア不利となることも予想されている。

  4. 福祉政策
     メディケア等につきゴアは詳細な提案(政府による保険。クリントン政権提案とほぼ同じ)を提示するも、ブッシュからは具体的な提案なし。無党派層にはゴア案が魅力的にうつっている模様。

  5. 外交
     世論は国際主義的志向を示しているが、実際には米国民は国際情勢にさほど関心がないというのが通説。中東和平問題を除けば、NMDや中国に対する政策等、一般世論がいかほど関心を有しているかは不明。



3. 欧州(ブルガリア)

 今回はヨーロッパで英国、ギリシャ、ブルガリアの3カ国を訪問したが、特に印象深かったのは初訪問のブルガリア。ブルガリアではコストフ首相、ミハイロヴァ外務大臣、ソコロフ国民議会議長などとの会見を行った。


ブルガリア ミハイロヴァ外務大臣(38歳)と会談

 97年5月に発足した現コストフ政権(民主勢力同盟を中心とした非共産勢力)は、89年11月の改革開始以来誕生した初めての本格政権であり、改革路線は着実に進みつつあるとの印象。現政権の最大の課題は、痛みを伴う経済改革を徹底的に実施し、市場経済化を促進すること(確かに、国民の間には共産主義時代の方がまだましだったとの声も残る)。この推進役となっているのが新世代の閣僚で、日本の内閣と比べ閣僚の年齢が以下のように圧倒的に若い。

 大統領(国家元首)
 ペータル・ストヤノフ    48歳
 首相兼国家行政大臣
 イヴァン・コストフ    50歳
 副首相件経済大臣
 ペータル・ジョテフ    49歳
 外務大臣      
ナデジュダ・ミハイロヴァ  38歳
 内務大臣     
 エマヌイル・ヨルダノフ   40歳
 法務大臣      
テオドシイ・シメオノフ   54歳
 大蔵大臣     
 ムラヴェイ・ラデフ     53歳
 国防大臣      
ボイコ・ノエフ        45歳
 運輸・ 通信大臣
  アントニイ・スラヴィンスキ54歳
 厚生大臣
     イルコ・セメルジエフ    41歳
 環境大臣
      エヴドキア・マネヴァ    55歳
 地域開発・建設大臣
 エヴゲニイ・チャチェフ 56歳
 労働・社会政策大臣
 イヴァン・ネイコフ    45歳
 農林大臣
    ヴェンツィスラフ・ヴァルバノフ  38歳
 教育・科学大臣
   ディミタル・ディミトロフ  68歳
 文化大臣
       エンマ・モスコヴァ     66歳
 無任所大臣
     アレクサンダル・プラマタルスキ 37歳

 そう言えば、今回訪問したアメリカでもクリントン大統領は、8年の任期が終わる今でもまだ54歳、英国のトニー・ブレア首相は1953年生まれの47歳。日本も政治の世代交代を進めなければ…。