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APEC-Eコマースコンベンションに出席して

本年5月15日と16日の2日間にかけて、東京で「APEC-Eコマースコンベンション」が開催され、私も共同議長として出席し、議長レポート及び報告書のとりまとめを行いました。
本会議は、昨年9月にニュージーランドのオークランドでAPEC閣僚会議が開催された際に、与謝野通産大臣から提案を行って開催の運びとなったものであります。
アジア・太平洋地域は、電子商取引を始めとするITビジネスの21世紀における主要な舞台となることが期待されており、ARECとしては本地域の電子商取引に関する政策課題に適切に対応し、必要な協力活動を行っていくことが求められています。

このような観点から、本会議は、APEC域内の電子商取引の官民の指導的プレーヤーが一堂に会し、世界の最新動向についての情報を共有しあい、問題点を抽出し、将来の活動を模索することを通じてAPECにおける電子商取引ビジネスを具体的に展開させるための促進剤とするとともに、電子認証をはじめグローバルなフレームワークづくりにAPECが積極的に参加していく素地を作ることを目的としています。
本会議には、13カ国、25名の官民のスピーカーとともに、内外から400名を超える聴講者が参加し、私は、アラン・ラーソン米国国務次官補、ダト・マライ駐日ブルネイ大使と共に共同議長を務めさせていただきました。
今回のAPEC-Eコマースコンベンションの概要は次のとおりです。

APEC/e‐コマースコンベンションの概要
1. 会議の位置づけ、目的等
APEC/e‐コマース・コンベンションは、昨年の9月オークランドでのAPEC閣僚
会合において通産大臣から提案されたもの。
本コンベンションは、急速に世界的に展開されている電子商取引について、APEC域内における電子商取引の官民の指導的プレーヤーが一堂に会し、(1)世界の最新動向についての情報を共有しあい、(2)APEC域内の実態についての認識を深め、問題点を抽出し、(3)将来の活動の方向を模索することを通じて、APECにおける電子商取引ビジネスを具体的に展開させるための促進剤とするとともに、電子認証(Electronic Authentication)をはじめグローバルに進みつつあるフレームワークづくりにAPEC地域が積極的に参加していく素地を作ることを目的。本コンベンションの成果は、APECSOMを通じ貿易大臣会合に報告の予定。


2. 議論の概要
○ 第1セッション:ITのインパクト
APEC地域の電子商取引の利用による経済的インパクトについて知見を共有。各スピーカーからは、APECの地域の持つ電子商取引の巨大なポテンシャルと共に、そのポテンシャルを発揮するための以下の課題について言及があった。
  • デジタル格差のデジタル・オポチュニティへの転換。
  • 人材開発が必須。スキルのプロファイル構築と訓練のための投資が必要。
  • ネットワークの規制緩和及び企業家支援が重要。
  • ニューエコノミーの時代に適応したルール整備が必須。

○ 第2セッション:ビジネス・ストラテジー
APEC地域におけるECビジネスの現状について知見を共有。各スピーカーからは、それぞれのビジネスモデルや戦略につき紹介があると共に、それぞれの抱える課題、課題に対する民間と政府の役割等について以下の通り言及があった。
  • 民間主導によるECビジネス展開が重要。政府の役割は制度的サポート及び障壁の低減。
  • 技術のみでは問題解決は不可能。文化・制度の格差、生産者と販売者、消費者の相互不信も解決しなければならない問題。
  • 消費者保護等の法的規制、制度の問題や言語の問題については、国別に制度が異なる中で、システム間の相互運用性を確保した上で、文化的多様性の確保という観点から、ローカル化をいかに図っていくかが重要と認識。
  • 有線整備、デリバリー等のインフラ、セキュリティ及び市場開拓が課題。
  • APEC経済の活性化にはITは不可欠。消費者の信頼獲得が必要であり、政府も組織推進が重要。ルールの国際調和やモデルプロジェクトの推進も有用。

○ 第3セッション:各エコノミーのレディネス(準備状況)
APEC各国のITの活用についての発展段階について把握。我が国の課題に関し、
有富郵政省電気通信局電気通信事業部長より以下の発言があった。
  • 主要問題としては(1)ユーザー料金(2)伝送速度(3)セキュリティがある。
  • ユーザー料金に関しては、許認可制から届出制に規制緩和するなど、競争環境を整備。今後の課題はローカル料金の低減。郵政省では、定額料金制度を支援。また、NTTユーザーをアンバンドルすべく取組を推進。ISPの定額料金の試験サービスも実施。
  • 伝送速度を高めた高速インターネットの整備も重要。99年度末での全土の28%まで高速インターネット網を整備。携帯でも2001年より第3世代が運用開始。
  • セキュリティでは不正アクセス法を制定。ファイヤーウォール構築のインセンティブを高めるための助成制度等を検討。電子署名・認証に関しては、国会に法案を提出中。

○ 第4セッション:国際的なポリシーチャレンジ
電子商取引を巡り、新たに国際的な課題となりつつある事項(消費者保護、デジタル・ディバイド等)について、国際機関等の認識、取り組みの紹介を通して課題への対応のあるべき姿を議論。その結果、政府においても対応すべき課題として、管轄権、消費者保護、知財権、プライバシー、ADR等が指摘されると共に以下の原則について指摘があった。
  1. 法的枠組み整備に当たっては各国に選択の自由度を付与すべき
  2. 国際的な相互互換性の確保
  3. オンライン・オフライン共に同じルールを適用すべき

また以下の点においてコンセンサスが得られた。
  1. APECメンバーの法的枠組み作りへの積極的な参画
  2. Eコマースに関する政策検討への法律専門家の参画

○ 第5セッション:APECは何をすべきか
第1~4セッションの議論を踏まえ、APEC地域の発展可能性を現実のものとするため、各エコノミーがどういった問題意識を持ち、対応すべきか議論。EC促進の阻害要因として中小企業の認識不足、通信インフラ格差(ハード整備、認証法制、人的資源不足など)、コスト、物流体制の不備等が指摘され、それに対し、以下の提言があった。
  • 国際標準化、相互認証、法整備、IT人材育成の推進や中小企業のEC化促進、電子政府の構築。
  • 今後、APECで協力しうる分野として、交流プログラムの実施、貿易円滑化、消費者保護など制度間ハーモナイゼーション、相互認証協力、セキュリティ協力、課金取決め等。
  • 競争政策として、独禁法体制の整備が必要。APEC規制緩和ガイドラインの実施に向けて努力すべき。
  • 域内におけるネットワーク構築の点では、相互接続、ニューエコノミー構築のための一貫した配送ネットの構築、その中には人材育成、航空自由化、小口貨物輸送の自由化、ペーパーレス通関システムなどを含む。