日本経済再生本部(第1回)議事要旨

Ⅰ.日時/場所

平成24年10月24火(水)14:00~15:00/党本部702号室

Ⅱ.議 題

  • 日本経済再生へ向けた方策について有識者ヒアリング
  • 演題 ) 「世界の変化と日本の課題」
  • 講師 ) 坂根 正弘 小松製作所 取締役会長

Ⅲ.冒頭挨拶

安倍 晋三 本部長
日本経済再生本部こそ自民党と民主党の違いであり、給付ありきが民主党で、新しい果実と収穫を考えるのが自民党。日本はこの十数年、デフレ状況の中で名目GDPが縮小し、国力と税収が落ち込んだ結果、外交においても地位が低下している。この状況に拍車を掛けているのが民主党であり、この本部でまとめた政策を政権獲得後直ちに行うことが求められている。
甘利 明 本部長代理
今年から来年にかけて経済の悪化が懸念され、このままでは取り返しのつかない事態になる。この本部で早急に方策をまとめ、政権公約に盛り込み、安倍政権実現後、直ちにスタートできるようにする。
茂木 敏充 事務総長
今後の日程について。これから週1~2回のペースで会合を開催し、11月末~12月初旬に中間取りまとめを行いたい。
産業競争力の強化、デフレ・円高対策はじめ5つくらいの論点を中心に議論をスタートする。

Ⅳ.講演要旨

【1】世界の基本的変化(時間を1ケタ長く変えてみると判る)
短中期(20~30年)、中長期(50~100年)、超長期(200~300年)と時間を1ケタ変えることで見えることがある。
世界の経済はバブルの変遷。コマツはバブル崩壊の影響を一番早く受け、海外志向せざるを得なかった。
リーマン・ショック後の日・米・欧の経済は悪すぎる。日本とアメリカは改善の余地がある。90年前後のバブルは団塊世代が40歳台で購買力が大きかったことも一因。
今、団塊ジュニアが同じ世代に向かっている。アジアの成長を取り込み、地方を活性化すれば、日本は再び成長できる。
世界は過去100年及び今後70~80年で急速に人口増が続く。さらに、都市化が進展し中間層が増大する見込み。日本は都市化率という概念がなかったため、都市化率が低い。都市化率が低いと各種社会インフラを含め公共サービスでムダが増える。現在都市化率を最も伸ばそうとしているのは中国。都市化の進展による中間層の増大で、世界のトレンドとして「資源・エネルギー」、「食料・水」、「地球環境」が大きな課題となる。
原発問題の本質として、反対論者の主張は①被災者、事故対応が未だ道半ば、②今年の猛暑を原発2基で乗り切った、③こんな危ない原発を後世に残せない、という3点。
①は私も全く同感。2点目の「今年の夏を乗り切った」という主張について、発電の88%(3.11以前は62%)が化石燃料頼みの先進国はどこにもない。化石燃料は資源の種類によって違うが50~150年で枯渇するにも関わらず、化石燃料依存を前提に議論するのは将来世代への責任を果たしていると言えるのか。
再生可能エネルギーで人類が生きられる道筋をつけることなく原子力を放棄することは無責任。今の原発を使っても総発電量の60%は化石燃料であり、化石燃料の代替が見つかるまでの間、原子力を放棄することは国益上あり得ない。
【2】日本企業の課題
日本国内が東京一極集中の結果、大都市も地方も投資機会を失い、低成長の時代となった。地域活性化を図るべき。
六重苦(円高・法人税・TPP・雇用・電力・環境)の問題に加え、最も深刻なのは産業構造。投資機会が無いにも関わらず、プレイヤー多数が消耗戦を繰り広げ、デフレの原因となっている。
「仕事さえ取れれば良い」という姿勢で雇用の確保を最優先に考える業界体質を変えないとデフレからは脱却できない。
各社が自前のITを持っているが、本社の仕事は“既製服”にした方が良い。“既製服”に合わないのはムダな仕事。オフィス部門のスリム化を図り、狭義のモノ作りコストで競争すれば日本は負けない。国や地方の行政のITも大きな問題を抱えている。マイナンバーなくしてITの合理化は不可。
膨大な固定費を抱えたままでは利益は出ない。変動費、固定費に分けて対応すれば、高収益が望める(コマツでは雇用、IT、子会社、商品数などを見直した。一方、デフレが続けば、コマツですら生産を日本でやっていけなくなると認識)。
高コストだけに着目して海外移転を進めても、本社やグループ経営の固定費が残っていれば苦しくなる。
【3】日本の課題
日本の取り組むべきテーマは「何故1人当たりGDPが先進国で最も低くなったのか」。
デフレの国でマイナスの物価修正するのはナンセンス。政府、日銀は常に実質GDPで比較するが、実態は名目GDPにある。実質GDPを用いるのはミスリーディング。
ドイツは、先進国の中で日本と産業構造が似ている上、人口減少、高齢化が近似。日本はドイツの復活から学ぶべき。20世紀末、今の日本のように低成長に苦しんでいたドイツが復活した要因は経済圏の拡大(EU)。為替の安定(ユーロ)そして地方の活性化。
働く既婚女性の子供の数は地方の方が高い(コマツでは石川>大阪>東京)。働く女性が子供を産めないというのは東京の論理であり、地方に回帰することで少子化を食い止めることにある程度貢献できる。
自民党がTPPに反対するのは信じられない。日本にとって戦略的重要市場はアジア。アジアの発展は政治の安定によるところが大きい。
ASEAN+3、+6の経済圏を第一にすべきだが、今回の竹島、尖閣問題でアジア内だけでの経済圏づくりの危うさが露呈。日中韓の現状を見ると安定するとは思えない。
最終ゴールをFTAAPと見定めると、日本がTPPを避けてFTAAPでの主導権を取ることは不可能。
一次産業は日本の製造業のDNAであり、成長産業にできる。どんな業界や企業も若者が魅力を感じない産業は衰退する。企業化、会社組織化、差別化した作物、製造業が社会貢献として一次産業に手を貸すといった策が必要。